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Masayuki Akiyama

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すばる望遠鏡第2期観測装置、光ファイバー多天体近赤外分光器の開発

光コンタクト技術誌に「近赤外線多天体分光の現在と将来」という文章を書きました。FMOSやMOIRCSでの観測やデータについて書いているので興味のある方は読んでみてください。こちら

FMOS = Fibre Multi Object Spectrograph : 光ファイバー多天体分光器

遠方の銀河や活動銀河中心核のの統計的な観測をする上で、広い視野中の多数の天体を同時に分光観測できる観測装置は非常に重要です。私は「すばる」望遠鏡のファイバー多天体分光器(FMOS)の開発を行っています。FMOSはその名の通り光ファイバーを用いた多天体分光器で「すばる」望遠鏡の最大の特徴である広い視野の主焦点に取り付けられます。主な特徴は、

  • 「すばる」望遠鏡の主焦点の視野の直径30分角の領域を400本のファイバーでカバーします。
  • 400本のファイバーを用いて、400個の天体が一度に近赤外線で分光観測できます。
  • 分光器は近赤外線の900nmから1800nmの波長域をカバーします。
  • 近赤外線での地上からの観測の最大の敵である夜光の輝線をマスクミラーを用いて除去する機構を持っています。
  • 分光器自体の熱放射を抑えるため、1.4mの鏡を含む大型の光学素子を含めた分光器全体を−50度から−70度まで冷却します。装置の開発は国立天文台ハワイ観測所、京都大学宇宙物理学教室、オックスフォード大学(イギリス)、ダーラム大学(イギリス)、アングロオーストラリア天文台(オーストラリア)との共同で行われています。

下の図は装置の全体像を示しています。「すばる」望遠鏡の主焦点で捉えられた光は緑の経路を通ってナスミス台の上の領域に作られた2台の赤外線分光器に届けられ、ここで分光されます。

図1:FMOSの全体像。

光ファイバーを配置する機構の開発

図2:FMOSの主焦点部、光ファイバーを配置する機構。

FMOSの開発を行う上で、400本のファイバーを直径15cmという「すばる」望遠鏡主焦点の限られたスペース(ファイバー1本あたり7mm四方しかない)に10ミクロンの精度で自由に配置する機構をどう実現するかは最大の課題でした。この機構として焦点面上に敷き詰められた針それぞれにファイバーを通し、その針をある角度だけ傾けるようにしてファイバー先端を自由に動かすというこれまでにはない全く新しいファイバー駆動方式がアングロオーストラリア天文台(AAO)のPeter Gillingham 氏により提案されました。この駆動方式を実現するためにAAOと共同で針駆動装置の設計、試作実験を進めました。インチワーム方式や衝撃駆動方式など多数の試作機が作成され、結果、4極のピエゾ素子にのこぎり波を与えることで駆動する衝撃駆動方式によって、ファイバーを通した針の駆動が数回のフィードバックをかけることにより観測に必要な精度で可能であることを実証しました。上の写真は観測装置に取り付ける実機の写真です。現在はハワイ観測所において、この実機を観測に使うための調整作業、安定した運用のための問題点の洗い出し作業を行っています。この新しいファイバー配置機構はFMOSだけでなく「すばる」望遠鏡の超広視野ファイバー多天体分光器(WFMOS)や次世代巨大望遠鏡のファイバー多天体分光器(MOMFOS)でも概念設計に取り入れられて注目されている。

大型の冷却分光装置

図3:FMOSの分光器部分。

400本の光ファイバーを通ってきた光は200本づつに分けられて2台の分光器の中に通されます。夜空の輝線を除去する光学系を含む大型の赤外線分光器は装置からの熱放射を最大限抑えるために大型の冷蔵庫の中に収められています。実際の観測の際にはそれぞれの冷蔵庫は−60度から−70まで冷却されます。光学系は1.4mミラーや、30cm角のシュミットプレート、30cm直径のVPHグレーティングを含む大型の光学素子からなっています。これらの光学系を冷やすことも難しい課題でした。この分光器を通った光は最後は赤外線カメラのデュワーに入り、赤外線検出器で検出されます。カメラデュワーは検出器の熱雑音を抑えるように77Kまで冷却されています。

試験観測

図4:FMOSで得られたこう正光源のスペクトル。横方向が波長分散の方向で縦方向はファイバーが並んでいる方向

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