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 研究課題4

課題名


日本の「すばる望遠鏡」で取得したデータと米国所有のデータの共同解析:銀河の集団化過程の解明


概要


成長する銀河(ボク)とそれを取り巻く環境


 私が専門としているのは「遠方銀河の観測」という分野です。宇宙のような途方もない大きさになると遠くを見ると昔の姿を見ていることになります。私が観測している遠方宇宙というのは時代でいうと100億年ほど前に対応し、銀河がまさに現在の姿に向かって進化している時代です(銀河にも誕生や子供時代があり成長するのです!!)。

 その中で今回の頭脳循環プログラムで私が行おうとしているテーマは「遠方宇宙における銀河の環境依存性の解明」というものです。環境依存性とは、銀河の性質が住んでいる場所(銀河が密集した地域か孤立した地域か)によって異なる現象です。銀河も(人と同じように)生まれや育ちによって異なる成長過程を辿ることが予想されています。それを調べることで、銀河の形成・進化のメカニズムの理解の助けにもなると期待しています。こうしたことを調べるにあたって重要な点が二つあり、一つは「広視野の観測」、二つ目は「より赤外域のデータ」です。前者は日本のすばる望遠鏡の強みであり、私が所属する東北大を中心とした銀河観測グループはその恩恵に与ってきました。一方、後者について派遣先のCfA/Fazio先生のグループはSpitzer衛星のIRACという赤外カメラを開発しており、そのデータを用いた赤外線天文学を牽引する チームです。よって私が派遣されることにより、日本独自の強みとCfAの強みを組み合わせて、世界でこれまでやられていないような素晴らしいサイエンスが可能であると考えています。

 私は今回派遣されるメンバーの中で最も若輩であり、一人で海外でやっていけるかどうか不安はあります。一方で、日米両国の強力なチームからサポートを受けられる非常に恵まれた環境にあるということを感じます。ですので今は、若輩であるからこそ失う物はなく、何事にも恐れずにぶつかっていこうという心境です。人間の場合は銀河とは違って、自分のいる環境に対する心の持ちようで成長の仕方がまた変わると信じています。

東北大学大学院理学研究科天文学専攻 博士後期課程1年  馬渡 健


担当研究者の言葉


東北大学天文学専攻

山田 亨 教授





 「頭脳循環」プログラムは、若き優秀な頭脳たちの武者修行として、十分な刺激を得ることができる、なかなかおもしろいプログラムです。私が学生だった頃は、海外への留学はおろか、国際学会や、外国の望遠鏡での観測などにもまとまった旅費や滞在費を得ることは難しく、大学院の3年目だかに、初めて外国の望遠鏡での観測時間をもらったときには、知り合いの先生や研究費を持っている先輩の間を「どさ回り」して、出していただいた謝金などをかき集めて出かけたものです。本当は、今の若い人にも、まずはそれくらいの苦労を・・・とか言うと、なんだか年寄りじみた話になってしまいますね。せっかくの良い制度なので、是非、十分に活用し、成果を上げて、「循環」がさらに続くよう、頑張ってほしいと思います。

 さて、私の研究室からは大学院生の馬渡健君がハーバード大学スミソニアン天体物理センターに1年間滞在し、数十億年、あるいは100億年以上をさかのぼる宇宙で、どのように構造の形成が進み、その中で様々な銀河がどのように誕生し、進化してきたのかを研究する予定ですが、彼がお世話になるのは、Giovannni Fazio先生、今も大活躍を続けている「スピッツァー衛星」という宇宙赤外線望遠鏡の、近赤外線カメラIRACという装置を作る中心になった方です。もともと、私自身も、同じグループの活発な研究者であるJiasheng Huang博士と知り合いで、共同研究を行っていたご縁もあるのですが、Fazio先生には、現在、私が代表となって進めている日本の将来の宇宙望遠鏡計画「WISH衛星」計画にも、津虚位興味を示していただいています。

 WISH計画は、現在、JAXA宇宙科学研究所のもとに、ワーキンググループとうい組織を作り、東北大をはじめ様々な大学や、国立天文台、宇宙研の研究者らが集まって、次期中型衛星のひとつとして、その概念の検討を進めているものです。「宇宙の夜明け」、つまり宇宙で第1世代の天体が誕生し、「宇宙最電離」と呼ばれる現象を跨いで、初期の宇宙の天体形成を解明することを目指す、野心的な計画です。口径1.5mの望遠鏡に、満月がすっぽり入る程度の広い視野のカメラを持ち、波長1-5ミクロンの近赤外線で、すばる望遠鏡などの地上の望遠鏡では観測が難しい非常に暗い銀河まで観測することを目指しています。このような宇宙望遠鏡の製作では新参者の挑戦者である我々にとって、Fazio先生のIRACを始めとする様々な経験や知識は、大変心強い援軍と言えます。この頭脳循環プログラムを通じて、若い人たちが活躍するとともに、このような将来計画においても、様々な協力の種が播かれ、やがて大きな果実へと育つことも期待されています。



成果


論文


学会発表

(口頭発表)


(ポスター発表)



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