c講演

銀河11c
藤平 晋二郎 鹿児島大学 M1 回転曲線から得られる系外銀河質量の推定誤差について 

銀河中に存在する星間物質がディスクに沿って円運動をしていると想定した場合、回転曲線は銀河の質量分布の推定にたびたび使われます。 しかしながら銀河ディスク中のガスは純粋な円運動をしておらず、特に中心領域ではバーの影響によって非円運動を引き起こしています。 つまり回転曲線から求める質量は正確ではありません。 私達はバーを持ったシミュレーション渦巻銀河を無限遠方& edge-on観測していると想定、 シミュレーションでの回転曲線から推定される質量誤差を計算し、観測によって得られる視線速度からの質量推定ではどれほど誤差が生じるかを求めます。 銀河内のgasの位置-速度図から最も速い速度を回転速度と仮定し、そこから作られた曲線を回転曲線と定義すると、 銀河中心からのどの半径においても視線速度からの銀河質量推定では本当の質量よりも多く見積もってしまっていました。 銀河中心近傍では約 30~50 %、spiral arm外周部付近では約 25~30 %の誤差が生じました。

銀河17c
池田 浩之 愛媛大学 D1 高赤方偏移低光度クェーサー周辺におけるライマンブレーク銀河の空間分布

超巨大ブラックホールの質量成長過程を明らかにするためには、クェーサーがどのような場所に存在するのか、 すなわちクェーサー周辺の銀河数密度を調べることが重要である。 過去の研究により、z〜3までのクェーサーと銀河の空間分布の比較が行われている。 その結果、遠方のクェーサーほど周辺の銀河数密度が高くなっていることが確認され、 銀河同士の衝突・合体が起こりやすい環境に存在することがわかっている(Shirasaki et al. 2011)。 しかし、z〜3よりも以遠については、 クェーサーと銀河の両方の空間分布を調べられる程度の広さと深さを兼ね備えたサーベイデータがなかったため同様な研究は行われていない。 そこで本研究では、Ikeda et al. (2011)にて新たに発見されたCOSMOS天域における8個の$z\sim4$の低光度クェーサーを用い、 その周辺のライマンブレーク銀河数密度を調査した。本講演では、その結果の詳細について報告する。

銀河18c
廣井 和雄 京都大学 D2 The First MAXI/GSC Catalog in the High-Galactic-Latitude Sky

We present the first source catalog of the Monitor of All-sky X-ray Image (MAXI) mission at high Galactic latitudes (|b| > 10°), produced from the first 7 months data (2009 September 1 to 2010 March 31) of the Gas Slit Camera in the 4--10 keV band. We develop a systematic analysis procedure to detect the faintest sources from the MAXI data, by utilizing maximum likelihood image fitting method, where the image response, background, and detailed observational condition are taken into account. Our catalog consists of 143 X-ray sources above 7 sigma significance level down to a limiting sensitivity of 1.5×10^-11 ergs cm^-2 s^-1 (1.2 mCrab). From cross-correlation with other catalogs, we identify 39 Galactic/LMC/SMC objects, 48 galaxy clusters, 38 Seyfert galaxies, and 12 blazars. The source counts of extragalactic objects are in good agreement with the HEAO-1 A-2 results.

銀河21c
村田 勝寛 名古屋大学 D2 COSMOS領域におけるチェーン銀河サンプルの構築

チェーン銀河とは、複数の巨大クランプが直線状に並び中心部に明確なバルジを持たない銀河である。 我々は、チェーン銀河の起源・進化を解明することを目的に、大規模チェーン銀河サンプルの構築を進めている。 本講演では、チェーン銀河の簡単な紹介をし、現在までに得られている我々の研究結果について報告する。 チェーン銀河は、1995年のハッブル宇宙望遠鏡による発見以来、これまでに深探査観測領域で約250天体見つかっている。 赤方偏移0.2から3程度の遠方宇宙に存在し近傍宇宙には存在しないことから、チェーン銀河が一部の近傍銀河の祖先であることが示唆される。 また、暗い銀河ではチェーン銀河は一般的な形態の銀河であるとの報告もある。そのため、チェーン銀河を系統的に研究し理解することは銀河進化を考える上で重要である。 これまでに、いくつかのチェーン銀河形成・進化モデルが提案されているが、未だ明確な結論は得られていない。 その原因の一つは、これまでに見つかっているチェーン銀河の数が少なく統計的な議論が難しかったことである。 我々は、先行研究の約10倍の観測面積であるCOSMOS領域においてハッブル宇宙望遠鏡の近赤外線データを用いてチェーン銀河サンプルの構築を進めている。 これまでにサンプル構築を終えたのでその結果について報告する。

銀河25c
市川 幸平 京都大学 M2 Swift/BAT硬X線サーベイで検出された活動銀河核の赤外線における性質

Swift/BAT 硬X線サーベイ (BAT サーベイ) は、硬X線 (14-195 keV) 領域で初の全天かつ高感度サーベイである。 軟X線と比べ、硬 X 線は厚いガスによる吸収の影響を受けにくいため、過去の軟X線サーベイでは取りこぼされていた近傍(z<0.15) の隠されたAGNの検出がBATサーベイによって可能になった。 また、BATサーベイで得られた活動銀河核 (AGN) サンプルのうち、特に9ヶ月積分カタログについては、軟X線におけるスペクトル観測および赤外Kバンドにおける観測から、 AGN の様々な物理量が得られており、いままで不可能だった隠されたAGNを含めての統計的議論が可能である。 そこで、我々は「あかり」中間赤外・遠赤外線カタログを用いて BAT 9ヶ月積分カタログの AGN サンプル 128 天体のうち、 対応天体が見つかった 84 天体について、柱密度 (=AGN の光学的な隠され具合) 、 および covering fraction (=AGN の幾何的な隠され具合) の違いによって 4 つのグループに分け、硬 X 線と赤外線との光度相関を調べた。 その結果、中間赤外線 (中心波長 9 $\mu$m, 18 $\mu$m) と硬 X 線の光度が、柱密度の違いに関わらず非常に強い相関を示すことがわかった。 この結果は、タイプによって赤外線光度が大きく変わるとされている一様連続なトーラスモデルでは説明できず、クランプトーラスモデルを支持している。

銀河26c
山岸 光義 名古屋大学 D1 「あかり」による近傍スターバースト銀河の星間氷の近赤外線分光観測

近赤外線帯は、水素の再結合線、多環式芳香族炭化水素(PAH)による輝線、 氷(H_2O、CO_2、CO)による吸収などがあり、星間物質の物理状態を議論するためには非常に重要な波長帯である。 特に氷は、銀河の化学組成やダストの温度に敏感に反応して吸収構造が変化するとされており、銀河の星間環境を調べる上では非常に重要な物質である。 しかし、近赤外線帯は大気の吸収の影響を受けるため、地上からの観測では連続したスペクトルを得ることが出来ない、という観測的な困難がある。 そこで私は、「あかり」衛星によって近傍のエッジオンスターバースト銀河NGC~253、NGC~3079、M~82に対して近赤外線分光観測を行い、 波長2.5--5.0μmまでの連続的なスペクトルを得た。その結果、各銀河内の複数の領域から、強いPAH3.3μm、Brα輝線と共に、H_2O、CO_2 氷による吸収を検出した。 本発表では、3つの銀河から得られたスペクトルを用いて、 銀河内におけるH_2O、CO_2氷の分布や、銀河ごとの星間環境の違いについて議論する。

銀河29c
田中 亜矢子 鹿児島大学 M1 近傍銀河星間ガスの原子ガス-分子ガス相転移

近傍銀河での全ガス密度(HIとH_2ガスの総和)に対する水素分子ガス密度の比f_molを用いて、 観測値から求めたf_molとElmegreenが提唱するISMの相転移論を基にした計算モデルf_molの比較と検証を行った。 NGC4254にて両者の$f_{mol}を銀河半径方向に対してプロットした結果、観測値から求めたf_molを最もよく再現していた計算モデルf_molのパラメータパターンは、 圧力がガス密度の2乗値で表され、かつ、CO-H_2コンバージョンファクターX_COの値が金属量に依存する時であることが分かった。

銀河30c
松岡 健太 愛媛大学 D2 最遠方電波銀河の化学的特性

高赤方偏移電波銀河の狭輝線領域(NLR)に着目することで、広輝線領域(BLR)では調べることができない空間的に広がった領域の金属量診断が遠方宇宙でも可能となった。 この金属量は母銀河の星形成史を反映しているため、銀河進化の理解においても非常に有益な情報となる。これまでの研究によって、 赤方偏移1<z<4の電波銀河におけるNLRの金属量が系統的に調べられてきた。その結果、赤方偏移z<4の宇宙における金属量は赤方偏移に対して顕著な変化を示さなかった。 これは電波銀河の主な重元素の生成時期が赤方偏移z〜4$よりもさらに高赤方偏移に位置することを意味し、 化学進化を理解するためにはより高赤方偏移の電波銀河を調べる必要があることを示している。 そこで、我々は現在見つかっている最も高赤方偏移の電波銀河TN J0924$-$2201(z = 5.19)に着目し、 Subaru/FOCASを用いた可視分光観測によって化学的特性を調べた。本講演ではこれらの研究成果について発表する。

銀河31c
五十嵐 朱夏 筑波大学 M1 銀河の化学進化

今日の我々人間の住む環境は、炭素や酸素、その他の重元素と呼ばれる様々の元素によって成り立っている。 しかしながら、宇宙に存在する元素のうち、90%は水素、10%はヘリウムであり、 それ以外の重元素はごくわずかしか含まれない。これは、ビックバンで作られた元素のほとんどが水素とヘリウムであり、 それ以外には、わずかな軽元素しか生成されなかったことを反映していると考えられている。 それではそのような重元素はどのようにしてこの宇宙の中で生成されたのであろうか? 原始のガス雲は、放射冷却によって温度が下がり、重力収縮によりコアを形成したのち、恒星となる。 その恒星内部の熱核融合や超新星爆発によって重元素が生成され、星間ガスに戻る。 そのようなガスから新たに恒星が誕生し、その進化の過程で新たに生成された重元素を星間ガスへ戻す。 銀河のような天体内では、このようなサイクルが繰り返され重元素が増え続ける。 これを銀河の化学進化と呼ぶ。銀河の進化と重元素の合成は、お互いに影響するので、ある銀河の化学組成からその銀河がどのように進化してきたのかを予想することができる。 現在の観測では、赤方偏移3ほどまでの銀河の金属量分布を調べることができるようになった。 本研究発表では、銀河の化学進化を軸に宇宙の中での物質循環過程の研究についてレヴューを行う予定である。

銀河40c
梅畑 豪紀 東京大学 M2 多波長同定で探るSSA22領域におけるサブミリ波銀河の性質

サブミリ波銀河(SMG)は現在の宇宙において銀河団の中心に存在する大質量楕円銀河の先祖であると考えられている。 ライマンブレイク銀河(LBG)の観測から存在が知られるようになったz=3.09原始銀河団があるSSA22領域はライマンα輝線銀河(LAE)が大きな密度超過を示し、 DRG, LABといった複数の高赤方偏移に位置する銀河種族も観測されている特異な領域である。 SMGも多数発見されており、原始銀河団環境におけるSMGの形成について、或いはSMGと他の銀河種族との関係、 またSMGという種族自体について調べる上でも適した領域であると考えられる。 我々はAzTEC/ASTEによる波長1.1mmの観測からSSA22領域に おいてSMGを112個検出した。 これらのSMGの性質を調べるにはサブミリ波以外の波長の観測が欠かせないが、単一鏡のサブミリ波画像は10”より低い分解能しかなく、 他波長における対応天体の同定は難しい作業となる。 そこで、まずIRAC3.6um,4.5um,5.8um,8.0umのカラーを用いて高赤方偏移に位置すると考えられる天体を選び、 SMGsの検出位置と比較して対応天体候補を抽出した。 さらに1”を切る高い位置精度を持つVLA1.4GHz画像及びSuprime-CamやMOIRCSの可視から近赤外の波長においても同定作業を進めた。 本講演では同定作業の手法及び得られた結果について議論する。

銀河41c
鈴木 賢太 東京大学 D2 Progenitors of massive galaxies in protocluster

2011年度より科学運用を開始するミリ/サブミリ波干渉計ALMAをはじめとして、 サブミリ波帯における測光、分光観測は遠方宇宙における銀河形成の重要な情報を提供する。 特に遠方宇宙では、可視光でダスト減光の寄与が大きい星形成銀河の割合が多く、必然的にミリ/サブミリ波帯における観測が重要となる。 ミリ/サブミリ波観測では星形成率1000M_◉ yr^-1もの爆発的星形成を行うサブミリ波銀河(SMGs)が見つかっている。 SMGsは近傍に見られる10^12 M_◉にも達する巨大楕円銀河の祖先と考えられており、 遠方における明るいSMGsの成長過程を見ることで巨大楕円銀河の進化を探ることができる。 私は、2007-2008にかけて我々が行ったASTE望遠鏡によるAzTECカメラ1.1mmサーベイによって得られたサブミリ波銀河(SMGs)について、 (サブ)ミリ波干渉計による観測を提案している。 干渉計観測によって、単一鏡の弱点である、高分解能による天体の同定、重ね合わせの効果(スタッキング)の分離などができる。 本講演では、原始銀河団領域に存在する爆発的星形成銀河の候補である10 mJy SMGの干渉計による連続波観測の解析結果、他波長データを用い、 この天体と原始銀河団の空間的位置関係、星形成率の制限などを議論する。