3 方向量子化(quantization of direction)

角運動量に関す固有値方程式Eq.(12),(16)から、 角運動量の大きさとそのz成分を、 同時に正確に測定することができることが分かる。

Eq.(3)より $ \hat{L}_x,\hat{L}_y$

$\displaystyle \hat{L}_x = i\hbar \left( \sin\phi \deL{\theta} +\cot\theta \cos\...
...y = i\hbar \left( -\cos\phi \deL{\theta} +\cot\theta \sin\phi \deL{\phi}\right)$ (20)

と書けるので、 $ {Y_l}^m(\theta,\phi)$$ \hat{L}_x$$ \hat{L}_y$の固有関数にはなっていない。 従って、角運動量のx成分やy成分を、 この状態において正確に測定することはできない。

角運動量はその大きさもz成分も、共に離散スペクトルになっていることが固有値方程式Eq.(12),(16)から分かり、 特に

$\displaystyle L=\hbar\sqrt{l(l+1)}$ (21)

の大きさの角運動量ベクトルのz成分が、$ 2l+1$個の飛び飛びの値 $ L_z=\hbar m$をとることが分かる。 角運動量とz軸との間の角度は

$\displaystyle \cos\theta = \frac{m}{\sqrt{l(l+1)}}$ (22)

という決まった値しかとることができない。 この現象を方向量子化(quantization of direction)と呼ぶ。 これはつまり角運動量のz成分が量子化されたという意味である。

図 1: 角運動量ベクトルは図の円錐に沿って歳差運動をしており、x成分やy成分は測定毎に異なる値をとる。
\includegraphics[width=9.00truecm,scale=1.1]{saisa.eps}

球面調和関数で記述できるある状態 $ {Y_l}^m(\theta,\phi)$では、 角運動量の大きさとz軸との間の角は変化しない(同時測定可能であるから、ある決まった値をとることができる。)。 しかし、角運動量のx,y成分については同時測定可能でないために一意に決めることができず、 $ L_x,L_y$の値は不確定となる。 このとき角運動量ベクトルはz軸の回りを歳差運動することになる。

fat-cat 平成17年2月26日