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 研究課題1

課題名


日本の赤外線衛星「あかり」が取得した全天データを用いた銀河系内ダスト全天地図の精度・解像度の飛躍的改善


概要


宇宙に広がる微かな光


 普段皆さんは、仕事や学校で忙しくて夜空をゆっくり見上げることは少ないかもしれませんが、日が沈んだ後、夜空を見上げてみたらそこには何が見えるでしょうか? よっぽどの大都会ではない限り、天の川をはじめ星が光っているのが肉眼でも見えると思います。でも肉眼で見えるのは大体星や銀河ですね。では宇宙で光っているのは、本当に星・銀河だけでしょうか? 皆さんは、赤外線画像を見たことはありますか? 例えばサーモグラフィーなどで人間の体温を測っている画像を目にした方もいるかもしれません。これは目で見るのとは違って熱を測っているものですね。赤外線で物が見えるとしたら、これを宇宙の観測に活かさない手はありません。天文学者も抜かりはなくて、1983年に米英蘭が協力してIRASという赤外線衛星を打ち上げました。

 この衛星は全天のサーベイ観測を行ったのですが、このIRAS衛星が宇宙を観測してみると、実は赤外線で見た宇宙は、星や銀河だけでなくダスト(塵)からの放射で広く満たされていることが分かったのです。IRASは欧米の衛星でしたが、我が日本も2006年に赤外線衛星「あかり」を打ち上げ、1年半をかけて赤外線で全天の観測をしました。

 私はこの「あかり」に打ち上げ前から現在まで10年間近く関わっています。日本の技術の粋を集めた結果、「あかり」はIRASよりも格段に良い空間分解 能で宇宙の全天観測を行うことができました。中間赤外線(7--25マイクロメートル)では太陽系内のダストが、遠赤外線(50--180マイクロメートル)では銀河系内のダストが特に明るく光っていますが、「あかり」のデータではその詳細な空間分布が明らかになりつつあります。更にこの観測データは、太陽系・銀河系の現在の姿を明らかにするのに重要なだけではありません。銀河系の遥か向こうから届く宇宙初期の更に微かな光を正確に捉えるためには、この銀河系内の正確な赤外線地図が欠かせないのです。IRASの観測データを基にしたダスト放射の赤外線全天地図は、現在ハーバード大学にいるFinkbeiner博士が中心となって解析を行い作成され、世界中で活用されています。私は、服部さん、土井さん、森嶋さんたちと共に、日本が誇る赤外線衛星「あかり」のデータを基にそれよりも格段に詳細な宇宙のダスト地図を作ることを目指しています。そのために、私はFinkbeiner博士ともタッグを組み、この頭脳循環プログラムの期間中にFinkbeiner博士のいるハーバード大学をたびたび訪 れて共同研究を進める予定です。

 ダストからの微かな光はどのように宇宙に広がっているのか、頭脳循環プロ グラムにサポートされて世界最先端の赤外線地図作成は進められていきます。

東北大学大学院理学研究科天文学専攻 准教授  大坪 貴文


成果


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