多天体補償光学系のシミュレーションのまとめ 1
多天体補償光学系のシミュレーションのセットアップ
大気乱流の計算やシングルガイドスターの補償光学系のシミュレーションについては
C++ ライブラリ Arroyo を用いる。トモグラフィーの部分は
まずは自分で C でコーディングしてテストしてみる。
高速フーリエ変換にはFFTW(計算速度が速いらしい、
日本でもFFTSSというのが開発されている)、
行列計算にはCLAPACKのライブラリを呼ぶ。試験的な計算はIDLでやってみる。
IDLのフーリエ変換結果とFFTWの結果は一致した。
4個のNGSをターゲットの周りに60"離して配置してターゲットの波面を推定するテストをしてみる。上の画像はマウナケアモデルを用いて計算したターゲット方向とガイド星方向の波面の様子を 0.1s 間隔で10s分計算してアニメーションにしたもの。風速は地上 5m/s 上空 30m/s となっている。
まず Neichel 2009 の定式化に基づいて計算してみる。波面計測の部分は無視して、ガイド星の方向のノイズなし波面(サンプリング0.021m)からターゲット星の方向の波面を推定する。定式化には円形開口の考慮が入っていない、各ガイド星の推定をばらばらに取り出すことができない、ので、端ではおかしくなる。
単層モデル
大気は 10km の高度の単層のモデルで波長はすべて 2.2um とする
((modified)focal_anisoplanatism_simulation -M s 1 10 1.0e-13 -l 2.2e-6, RMS=5373nm@2200nm)を用いる。
左から天体からの波面、4個のガイド星で推定した波面、残差。上の段はLeast-Square Errorによる。4個のガイド星からの波面をずらして同じ重みづけで足す形(周波数空間で)になっている。下の段はMinimum-Mean-Square-Errorによる計算。ノイズが加わるとすべての周波数で測定の重みづけが下がる(SN比の逆数が重みに加わって下がる)だけなので、パターンは変わらず、ある値がかかったようになるだけ。表示の範囲は同じ。
2層モデル
単層モデルと同じガイド星のセットアップ。大気は10kmと1kmの2層((modified)focal_anisoplanatism_simulation -M s 2 10 1.0e-13 1 1.0e-13 RMS=5382nm@2200nm) で波長は2.2um。円形開口のままだとめちゃくちゃになったので、中央の領域だけ方形に切り出して計算してみた。図は上と同じだが、いちばん右は残差の表示の範囲を1/10にしたもの。表示のスケールは同じ、diff のみ範囲が違う。上段のLSE では格子状のパターンが見られる、Unseen mode による?。中央部分の波面誤差は RMS=366(nm)。SN=10 とした 中央段の MMSE では格子状のパターンは薄くなった。中央部分の波面誤差は RMS=92(nm)。SN=1 とした下段の MMSE では全体に平均的に小さくなる。
マウナケアモデル
ガイド星の配置は同じで11層のマウナケアモデル(focal_anisoplanatism_simulation default, Ellerbroeck MaunaKea, 0.20m@550nm, RMS=3405nm@2200nm)。上段はLSEによる推定。4スミにシフト+重ね合わせの影響が見えるが、特に格子模様のパターンは見えない。中央部分の波面誤差はRMS=364(nm)。中央および下の段はMMSEでの推定。SN=10とした。中央の段のMMSEでの推定の際にはモデルを計算するときに用いたCn2の値を用いた。この場合の中央部分の波面誤差はRMS=176(nm)、小さくなった。下の段のMMSEでの推定の際にはCn2の分布を上層と地上付近の2層にした。この場合の波面誤差はRMS=497(nm)で11層のLSEによる推定よりも大きい。
LSEの場合の各層の推定をブレークダウンしてみる。(90m, 1826m(0.136), 2720m(0.163), 4256m(0.161), 6269m(0.167), 8340m(0.235), 10546m(0.068), 12375m(0.032), 14610m(0.023), 16471m(0.006), 17028m(0.007))上の段は11層のモデル計算を各層に行った物、2段目はLSEによる各層の推定結果。LSEの推定では各層の強度の情報は入れないので、推定結果は均等になっている。3段目はMMSEによる各層の推定結果。2層目から6層目にパワーがあるという情報を使っているのでこれらの層では強度が強くなっている。4段目はMMSEだが地上と上層の2層のみとした場合。
このままの定式化だと円形開口を取り扱えない。そもそも Nechel 2009 のは周波数空間での解析だったので、仕方がない。Gavel 2004 の定式化をチェックしてみる、こちら。
|