1 周期関数を含む場合

デルタ関数としてよく用いられる(周期関数を含む)、

$\displaystyle \varphi _n(x)=\frac{\sin nx}{\pi x}, \quad n\in {\bf N}$ (10)

について考える。 極限 $ \lim_{x\to 0}\sin x/x=1$から、$ x=0$での値は

$\displaystyle \varphi _n(0) = \frac{n}{\pi}$ (11)

で、 $ n\to\infty$と共に単調に増加し、無限大になる。 また$ x\ne 0$では周期$ 2\pi/n$で振動していて、 その振幅は $ \vert x\vert\to\infty$と共に減衰していくことが分かる。 $ n\to\infty$では非常に激しく振動することになり、 ついに周期$ 2\pi/n$が零になる。更に全領域で積分すると(付録A「複素積分」のEq.(22)を参照)、

$\displaystyle \int_{-\infty}^{+\infty} \varphi _n(x)dx = \int_{-\infty}^{+\infty} \frac{\sin nx}{\pi x} dx =1$ (12)

となる。 $ n\to\infty$では、 $ x\ne 0$の部分の関数は激しく正負に振動しており、 この積分にはほとんど寄与してこなくなる。 一方で$ x=0$の部分の寄与は次第に大きくなるので、 Eq.(12)の性質は保たれることになる。

以上からEq.(10)の関数は $ n\to\infty$の極限でデルタ関数の全ての性質を再現するので、

$\displaystyle \delta(x) = \lim_{n\to \infty} \frac{\sin nx}{\pi x} , \quad n\in {\bf N}$ (13)

とすることができる。

fat-cat 平成17年2月18日