1 p=1の場合

陰公式で最も扱いやすいのは $p=1$ としたときで、 (8) は

$$-\alpha U_{j-1}^{n+1} +(1+2\alpha)U_j^{n+1} -\alpha U_{j+1}^{n+1} =U_j^n$$ (11)

と書き換えることができ、 (9)と(10)は

$$\begin{pmatrix}1+2\alpha & -\alpha & & & & 0 -\alpha & 1+2\al... ... U_2^{n} \vdots \vdots U_{J-2}^{n} U_{J-1}^{n} \end{pmatrix}$$ (12)

と書けるので、 時刻 $t{}^n$ での $U_j^n$ が $j=1$ から $j=J-1$ まで与えられたとすれば、 (12)の両辺に大きな行列 $C$ の逆行列を掛けてやれば、 時刻 $t{}^{n+1}$ での $U_j^{n+1}$ が求められることになる。 ここで、境界条件(4) は $U_0^n=0$、$U_J^n=0$ として表している。

大きな行列の逆行列を求めるのは一般には必ずしも容易ではないし、 行列 $C$ の様に帯対角成分以外は零であるような行列をそのままひっくり返すのは、 経済的にも余り良い方法であるとは言えない。 ここでは行列 $C$ が三重対角行列となっているので、 漸化式(11)を用いて解くことを考える。

(11)は形式的に

$$P_j U_{j-1}^{n+1} +Q_j U_j^{n+1} +R_j U_{j+1}^{n+1} =U_j^n$$ (13)

と書ける。ここで

$$P_j = -\alpha , \quad Q_j =1+2\alpha , \quad R_j = -\alpha$$ (14)

であり、

$$P_1 =0 ,\quad R_{J-1} =0$$ (15)

とした。 (13)に於いて、 $j=1$ と $j=2$ とした二つの式を使って $U_1^{n+1}$ を消去すれば、

$$\left(Q_2 -\frac{P_2 R_1}{Q_1}\right) U_2^{n+1} +R_2 U_3^{n+1} =U_2^n -\frac{P_2U_1^n}{Q_1}$$ (16)

となり、または

$$\tilde{Q}_2 U_2^{n+1} + R_2 U_3^{n+1} =\tilde{U}_2^n$$ (17)

を得る。ここで

$$\tilde{Q}_2 = Q_2 -\frac{P_2 R_1}{Q_1} ,\quad \tilde{U}_2^n = U_2^n -\frac{P_2U_1^n}{Q_1}$$ (18)

である。これと、(13)の $j=3$ とした式とを使って今度は $U_2^{n+1}$ を消去すれば

$$\tilde{Q}_3 U_3^{n+1} + R_3 U_4^{n+1} =\tilde{U}_3^n$$ (19)

を得る。ここで

$$\tilde{Q}_3 = Q_3 -\frac{P_3 R_2}{\tilde{Q}_2} ,\quad \tilde{U}_3^n = U_3^n -\frac{P_3\tilde{U}_1^2}{\tilde{Q}_2}$$ (20)

である。同様の操作を繰り返せば

$$\tilde{Q}_j U_j^{n+1} + R_j U_{j+1}^{n+1} =\tilde{U}_j^n$$ (21)

$$\tilde{Q}_j = Q_j -\frac{P_j R_{j-1}}{\tilde{Q}_{j-1}} ,\quad \tilde{U}_j^n = U_j^n -\frac{P_j\tilde{U}_{j-1}^n}{\tilde{Q}_{j-1}}$$ (22)

を得る。これを $j=J-2$ まで繰り返せば

$$\tilde{Q}_{J-2} U_{J-2}^{n+1} + R_{J-2} U_{J-1}^{n+1} =\tilde{U}_{J-2}^n$$ (23)

となるが、これと(13)で $j=J-1$ とした式

$$P_{J-1} U_{J-2}^{n+1} + Q_{J-1}U_{J-1}^{n+1} =U_{J-1}^n$$ (24)

とを連立させて解けば、

$$\tilde{Q}_{J-1} U_{J-1}^{n+1} = \tild... ...^n \quad \therefore U_{J-1}^{n+1} = \frac{\tilde{U}_{J-1}^n}{\tilde{Q}_{J-1}}$$ (25)

を得る。 このように求められた $U_{J-1}^{n+1}$ と漸化式(21)とを使えば、

$$U_j^{n+1} = \frac{\tilde{U}_j^n -R_j U_{j+1}^{n+1}}{\tilde{Q}_j}$$ (26)

より、 $j=J-2$ から $j=1$ までの $U_j^{n+1}$ を求めることができる。